Dr.Mochizuki’ s Column コラム vol.28
日本だけ、ほとんどのワクチン接種が「皮下注射」である理由 -山梨県で多発した病気がその理由です。
望月 吉彦(医療法人社団エミリオ森口 理事長/芝浦スリーワンクリニック 院長)
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# Vol.27
手術は前の晩から始まります。お風呂に入りながら、あるいは寝る前に執刀開始から終了までの手術手順を頭の中で整理します。「前の晩に手術手順を頭の中で整理する方法」を教えてくれたのはO先生です。O先生の手術はいつもテキパキと進み迷うことがありません。
外科医をやっていると色々な経験をします。いくつか紹介しましょう。最初はとても真面目な話です。
手術は前の晩から始まります。お風呂に入りながら、あるいは寝る前に執刀開始から終了までの手術手順を頭の中で整理します。「前の晩に手術手順を頭の中で整理する方法」を教えてくれたのはO先生です。O先生の手術はいつもテキパキと進み迷うことがありません。「どうしたら先生の様に遅滞なく手術が出来るのですか?」と伺ったら「前の晩に、手術手順、患者さんの病状、病態を良く考える事で手術が進むよ」との事でした。毎回の手術で同様なことを繰り返していると聞き、びっくりしました。O先生は後に某大学の学長にもなった偉い方です。そのような先生でもそういう準備をしていると聞き「これは真似しよう」と思いました。
元ジャイアンツの堀内恒夫さんの講演を聞く機会がありました。堀内さんは「登板日の前夜、相手チームのバッターからどうやってアウトをとるか、以前の対戦データを検討していた」そうです。手術に通じる話ですね。
手術当日は朝1番で患者さんのところに行って体調などを確認します。それから手術室に向かいます。病状の最終確認(超音波の画像、カテーテルの画像などを再度記憶)、人工心肺の確認、麻酔科医師との相談、手術看護師との打ち合わせ、手術に使う機材の確認、などを行います。麻酔開始後は再度手順の確認を頭の中で行っていました。
TVを見ていたら、A元大臣が出ていました。その方から手術直前に電話がかかってきたことを思い出しました。手術開始直前、交換台から「A大臣室から電話が入っています。先生につなぐように言っています」と連絡が入りました。大臣の用件は「今日、先生が手術するBさんは私の後援会の大切な人だ。くれぐれもよろしく」とのことでした。手術は予定通り終わり何事も無く退院しました。「手術日に大臣から電話があった」と病院内でちょっとした話題になりました。
その筋の偉い方を手術したこともあります。部屋にはいつも怖そうな部下が病室にいました。手術前の説明の時には強面の方々が20名程度、勢揃いしました。会議室で手術の説明をしました。手術日前後に怖いお兄さんが「事故でも起こると困るので先生の自宅から家まで、送り迎えをする」と言われましたが、丁重にお断りしました。無事手術が終了して退院。ほっとしました。
緊急で入院してきた別のCさんのことは、今でも忘れません。緊急入院してきました。放置すれば死亡率の高い病気で、救命には手術しか方法がありませんが、極めて難易度が高い手術が必要です。土曜日の昼頃にいらしたのです。手術をすれば夜中までかかります。怖そうな部下が大勢付き添っています。同僚医師は「止めよう」「手術して亡くなったら大変な事になる」と言っていました。そうは言っても重い病気です。Cさんには「この病気は内科的治療では1週間以内に突然死する可能性が高い事、手術をして死亡率は高い事」などを伝えたら、「悪い奴をやっつけようとしたら胸が痛くなった。胸が死にそうに痛い。」「このままなら、死んでしまうと素人の俺でもわかる。手術してくれ。」と言ったので手術準備を始めました。着ていた服を全部脱がせたら、私も他の先生も看護師さん達も言葉を失いました。全身傷跡だらけでした。こんなに多くの傷跡は後にも先にも見たことがありません。
私:「この多数のキズはどうしたのか?」Cさん:「中学生の頃から刃物を使って喧嘩してきたから。ナイフや包丁や日本刀で切られたキズだよ。先生もメスを使うだろう。同じだよ。」無事、10数時間かかった手術も終りCさんの胸と足にまた「刃物のキズ」が増えてしまいましたが元気に退院していきました。色々な人生がありますが「喧嘩に明け暮れる」人生とは無縁でいたいですね。
私が研修医の時、ある大企業の創業者が入院してきました。話し好きな方で色々な話をしてくださいました。様々な会社を作った話、ライバル企業に勝つにはどうしたらよいか? 製品開発の話etc。。面白かったです。無事手術が終わり、退院が決まった時「羊羹」を頂きました。「珍しい羊羹だから家で開けるように」と言われ、家で開いたら羊羹とは別のモノが入っていました。別のモノは返しに行きました。「これくらい受け取ってくれ、勉強のために使ってくれ受け取らないなら先生は偉くなれない」と言われました。受け取りませんでした。黙って受け取っておけば「偉く」なったかもしれません(笑)。外科医をしていると、良くも悪くも、色々な経験をしますが、外科医にとって大切なのは「真っ当に」「誠実に」「一生懸命」手術や治療を行う事だと思っています。
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