# 多様性

# Diversity & Inclusion

# Vol.25

「D&I」から「DE&I」へ 平等(Equality)よりも公平(Equity)を

#Respect each other   #多様性   #新たな働きかたのヒント   #インタビュー  

企業経営において「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」は必須とされるようになってきましたが、欧米では「Equity(公平性)」という概念が加わり、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」という考え方が推進されています。こうした流れを受け、日本でも大手企業や外資系企業などが次々とDE&I宣言をしています。
今回はこのDE&Iの考え方についてダイバーシティの専門家にお話を伺いました。

Profile

宮原 淳二 Junji Miyahara

株式会社東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部長

株式会社資生堂に21年間勤務し、多岐にわたる業務を経験する中でも人事労務全般に携わる期間が長く、人事制度企画から採用・研修まで幅広く担当。2011年1月、株式会社東レ経営研究所に入社。社外活動としては、内閣官房「暮らしの質向上検討会」座長、文部科学省中央教育審議会専門委員、東京商工会議所「多様な人材活躍委員会」識者等を歴任。

Interview | 誰も置き去りにしない社会を目指して

金丸 : DE&Iの「Equity(エクイティ:公平性)」とはどのような考え方なのですか。

宮原 : ダイバーシティにおけるEquityとは、一人ひとりの違いに目を向けることです。これまでの社会は効率性という観点からマジョリティ(多数派)に目を向けて物事が進められてきましたが、マイノリティ(少数派)な存在にもきちんと向き合おうという概念です。例えば、人口の大半を占める右利きの人に合わせた環境の中で、約1割とされる左利きの人は、本を読む、文字を書く、料理やスポーツをするなど、さまざまな場面で不自由さを感じながら生活しています。

金丸 : 確かにそうです。ではなぜ今、Equity(公平性)が注目されるのですか。Equality(平等)との違いについても教えてください。

宮原 : そもそも社会には本人の努力だけでは挽回できないような不平等な構造があり、誰もが同じスタートラインに立てるわけではありません。平等はすべての人々に同じ機会やリソースを提供することですが、それでは不平等さは解消されません。公平性は一人ひとりのニーズや背景に応じて適切なサポートを提供することです。これまでのD&IにEを加えることで、どんな状況に置かれている人でも活躍できる環境を整備していこうという想いが表れているのではないでしょうか。

金丸 : そのためにはマイノリティの意見をくみ上げることが重要となりますね。日本人はどうしても主張せずに我慢する方が多いように感じます。

宮原 : どうせ言っても変わらないとあきらめているのかも知れません。自分の考えや感情を遠慮なく表現できる心理的安全性が保たれた職場環境を作ることが必要です。困っていることや悩んでいること、要望などを気兼ねなく口に出せれば、マイノリティの意見を知ることができます。 ただし、注意しなければならないのは、マイノリティの意見がすべて通るわけではないことを捉えておく必要があることです。その意見がもっともだ、その通り、と賛同された場合には、これまで我慢してきたことが改善に向かうことでしょう。 また、グループミーティングなど、大勢の前で発言することが苦手という人もいます。そうした場合は上司が定期的に1on1ミーティングの場を設定し、個々人の性格に応じたコミュニケーションを取ることで、相互の信頼関係の構築が図れることと思います。

金丸 : DE&Iを促進することで期待される効果とはどんなものですか?

宮原 : 異なるバックグラウンドや視点からの意見を取り入れることで、新しいアイデアや発想が得られるかもしれません。彼らの多様な意見が組織内で受け入れられることで、より創造的な問題解決手法やイノベーションが生まれる可能性も高まります。さらに企業はこれまで埋もれていたニーズや要望の掘り起こしへと繋がり、さまざまな顧客や市場に適応しやすくなります。このように、チーム全体のパフォーマンスが向上することで、職場環境の改善や新たなビジネスの機会を創出できることが期待されているのです。

金丸 : D&IからDE&Iへと発展させようとしたときに求められることとは?

宮原 : まずはマイノリティの気持ちに寄り添うこと、ではないでしょうか。今はマジョリティ側にいると思っていても、誰しもがマイノリティになる可能性があります。例えば病気や怪我をしたことでマイノリティとなり、ものの見方が大きく変わり、不自由さに気づくこともあるかもしれません。マイノリティに対する想像力も必要だと思います。また今後はマイノリティの存在に目を向けられるリーダーが増加することで、組織力が高められるでしょう。

金丸 : 最後に、DE&Iを推進していくにあたり大切にされていることはありますか?

宮原 : 前職時代、当時の社長と話す機会があり、「管理職に必要なスキルは何ですか?」と聞いたことがありました。私は「強いリーダーシップや意思決定力」と言われると思っていたら「これからの時代は寛容さだ」と言われました。もう15年ほど前のことですが今でも心に残っていて、まさに現代のDE&Iに通ずることだと思っています。 時代性はその人の人間性を形づくると言われてます。過去のリーダーシップの在り方が時代遅れになることも多々あります。現代のような人口減少社会においては、個々人の可能性に目を向け、誰しもが生きやすい、また取り残されない世の中に変わることで社会は寛容になれるのではないでしょうか。

金丸 : 自分と同じ考えでなくてもしっかり相手の意見を聞いて受け入れること。まさにDE&Iを進めるうえで必要な姿勢ですね。今後、私たちもEquity(公平性)の視点で対応を考えていくうえでとても勉強になりました。本日はありがとうございました。

Profile

金丸 恭子 Kyoko Kanamaru


シミックホールディングス株式会社 グループコンプライアンス担当

Diversity & Inclusion

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