# HIRAKU’s VIEWPOINT

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# Vol.26

ゲイ男性としての正直な意見

Hiraku(中村キース・ヘリング美術館ディレクター)

#LGBTQ   #コラム  

近年、世間ではLGBTQ+コミュニティを取り巻くダイバーシティやインクルージョンについてのメッセージをよく見かけます。

近年、世間ではLGBTQ+コミュニティを取り巻くダイバーシティやインクルージョンについてのメッセージをよく見かけます。みなさんも「Love is love」や「レインボープライド」などといった、愛やプライドをテーマにしたスローガンや団体名を目にすることが多いのではないでしょうか。ゲイ男性として、私は正直、そんなロマンティシズムやちょっとおしゃれに感じるような言い回しを使った、平等を訴えるマーケティング方法に違和感があります。 

愛やプライドは人間にとって非常に重要なコンセプトであり、特にこれまでフィジカルであった人間関係がデジタル化の道を進む現代社会において、さらに重要視されるべきだと思います。 

欧米文化では「愛」は習慣的に日常会話に存在しています。例えば「I love you.」というフレーズは家族や友人、恋人、時には知人に対しても使われるものですが、日本で生活していると、日本語で「愛してます。」などとはなかなか口にしません。恋愛関係では「大好き」などと伝える習慣のある人もいるかもしれませんが、家族や友人に対し、直接的な言葉で愛情表現をする人はあまりいません。 

そのような愛についての会話を、習慣的、または文化的にしない日本人に、「私たちの愛し合い方はあなたたちの愛し合い方と同じです!」と言っても、同感や共感を得られるのでしょうか。また、他人の愛情について理解を求められても、想像がつかないのではないでしょうか。では、根本的に人権問題であることに注目してみたらどうでしょう。個人的に、私がどう人を愛そうと、誰を愛そうと、その「愛」を理解してもらいたいとは思いません。愛をテーマにしたスローガンを通し、私たちが世間に伝えたいのは、LGBTQ+であることを理由に結婚や社会保障といった権利が妨げられている現実を知ってもらうことです。

私が日本に住み始めて10年の月日が経ちますが、特に日本では「特別扱い」が不平等であり、よくないものとして一般的には見られていると感じます。そんな中、LGBTQ+コミュニティが直面する不平等な現実を、みなさんにも疑問に思ってほしいのです。「誰とでも結婚できるようになったら動物とも結婚できるのか」というような反論もありますが、私たちLGBTQ+コミュニティの人々は人間であり、動物や別の生物ではありません。「ゲイだから特別扱いしてほしい」と言っているわけではありません。ゲイであっても平等に接してほしいのです。 

2024年こそ、LGBTQ+コミュニティの人たちが平等に権利を持って生きられる日本になることを願います。

PROFILE

Hiraku

中村キース・ヘリング美術館ディレクター

ニューヨーク育ち。2014 年まで米国人コスチュームデザイナー・スタイリスト、パトリシア・フィールドの元でクリエイティブ・ディレクターを務め、ナイトライフ・パーソナリティーやモデルとしても活動。現在では中村キース・ヘリング美術館でプログラム&マーケティングディレクターとして、自身が人種・性的マイノリティーとして米国で送った人生経験を生かし、LGBTQ の可視化や権利獲得活動に積極的に取り組んでいる。

https://www.nakamura-haring.com/

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