世界の医薬品市場が変わる今、日本の進む道とは?
ー急成長の中国、変化に向き合う米国
# ヘルスケア
# Healthcare
# Vol.31

Apple WatchやFitbitは医療機器?
最近のスマートウォッチには、聴覚や心電図、それぞれ、睡眠中の呼吸の乱れからリスクを通知する、または血圧の推定や測定から高血圧の可能性を示唆する機能があります。では、スマートウォッチは医療機器なのでしょうか?
答えは、NOです。スマートウォッチ本体ではなく、スマートウォッチに入っているアプリ=ソフトウェアが家庭用医療機器として承認されています。
ウェアラブルデバイスには医療機器相当の性能があるセンサーが搭載されていて、そこから収集されたデータを分析するアプリがプログラム医療機器になります。
今回は、デジタルを活用した生体データについてのお話です。
デジタルバイオマーカーとは?
従来のバイオマーカーは、血液検査や画像診断など診察室で測る「点」の測定が中心でした。一方、デジタルバイオマーカーは「線」で捉えることができます。毎日の生活の中で得られる連続データを収集し解析することで、より詳細な体の状態をチェックできるようになります。
たとえば、うつ病の回復過程を睡眠や活動量の変化から見たり、パーキンソン病の微妙な運動変化をスマホ操作や歩き方から把握したりできます。連続データは、医療機関での来院時点データを示す「平均値」だけでは見えないリズムや変動を教えてくれるのです。
生活の中で測り続ける医療へ
── デジタルバイオマーカーの全体像とIoTの現在地
医療は今、「診察室で測る」から「生活の中で測り続ける」へと大きく変わろうとしています。その変化を支えているのが、デジタルバイオマーカーです。スマートフォンやスマートウォッチ、家庭用のヘルスデバイス、さらには衣服や寝具に組み込まれたセンサーまで、私たちが日常で使うことのできる様々な計測機器が開発されています。そこから得られる心拍、活動量、睡眠、音声、歩行パターンなどのデータは、病気の兆候や治療効果を見極める新しい指標として注目されています。
ウェアラブルとIoTの力
スマートウォッチや活動量計では、心拍や睡眠、歩数などを常時記録し、クラウドに送信して解析します。さらに、家庭用IoT機器は血圧計や体重計、睡眠センサーなどを各機器それぞれがクラウドに連携し、家全体を「健康管理のプラットフォーム」にに変えることも可能です。重要なのは、測定が負担にならないことです。装着忘れや操作の煩雑さは、継続を妨げる大きな要因となりますが、家庭用IoT機器(ウェアラブル?)ではそうした負担なく測定することができます。
医療機関での活用
日本の医療機関でも、ウェアラブルデバイスを活用した新たな「ウェアラブル外来」や「スマートウォッチ外来」が始まっています。
これらの外来ではApple Watchの心電図(ECG)機能を活用した外来を開設し、特に術後患者のリモートモニタリングに利用されています。自宅で記録したデータから不整脈や心房細動の再発を早期に察知し、遠隔でのサポート体制が整っています。不整脈の早期スクリーニングや、PHR(Personal HealthRecord)としてスマートウォッチを活用し、外来診療に組み込んでいる事例もあります。患者の生活習慣や自覚症状を多角的にモニタリングし、より精緻な診療を可能にする試みです。臨床試験でも、従来の評価方法ではなくデジタルバイオマーカーによる有効性や安全性の評価への活用が始まっています。
課題について ──データの精度と標準化
デジタルデータの精度は、装着位置や環境、アルゴリズムの違いで変わります。メーカー間の差やアップデートによる変動もあります。臨床で使うには、標準化や再現性の確保が欠かせません。様々な機器が開発されると異なるデバイスからのデータ同期、フォーマット統一などのデータ連携と標準化の課題が出てきます。
プライバシーと信頼
連続データはプライバシーの塊です。位置情報や睡眠、活動パターンなどが組み合わされることで、個人像が詳細に浮かび上がります。
だからこそ、取得範囲や利用目的の明確化、同意取得のわかりやすさ、データ管理の安全性が重要になります。
まとめ
シリーズ デジタルバイオマーカー第1回では、生活の中で測り続ける医療の可能性を紹介しました。
次回は、血糖と血圧という具体的なテーマで、デジタルバイオマーカーがどのように役立つのかを掘り下げます。
PROFILE
三友 周太 Shuta Mitomo
シミックホールディングス株式会社 CAN Unit =Consulting And Navigation Unit Principal
経歴 1991年~ 日本シエーリング株式会社(現バイエル薬品)
臨床開発部入社
2005年~ シミック株式会社 臨床開発部、プロジェクトマネジメント部、企画推進本部(執行役員)を経て
シミックホールディングス株式会社 CAN Unit
得意分野 画像診断領域(MRI・X線・超音波), Digital Health
所属学会 アートミーツケア学会、日本製薬医学会
その他の活動 JaDHA=日本デジタルヘルスアライアンス、山梨COT-NEXT 副リーダーまた現代美術家SYUTAとして国内外での展示や、社会処方や対話型鑑賞をテーマにしたワークショップの企画運営、展覧会の監修に携わる。