HIRAKU’s VIEWPOINT コラム vol.28
「IKIGAI」言語化ワークショップ
Hiraku(中村キース・ヘリング美術館ディレクター)
# HIRAKU’s VIEWPOINT
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# Vol.29
2025年1月、アメリカ合衆国第47代大統領としてトランプ氏が就任しました。その直後となる3月上旬に、政府機関に対して「特定の語彙の使用を控えるように」との方針が出されたと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じています。
150語以上が含まれるこのリストには、社会の多様性や個の尊厳、環境問題に関わる表現が多数含まれており、現在その語彙は公的文書やウェブサイトなどで使用が避けられています。
たとえば以下のような単語が含まれていました。
● diversity(多様性)
● inclusion(包摂)
● equity(公平性)
● equal opportunity( 機会の平等)
● LGBTQ/transgender/non-binary( 性的少数者関連)
● gender identity( ジェンダー・アイデンティティ)
● allyship(連帯)
● pronouns(代名詞)
● assigned at birth( 出生時に割り当てられた性別)
● racism/racial justice( 人種差別・人種的公正)
● bias/unconscious bias( 偏見・無意識な偏見)
● marginalized( 周縁化された人々)
● underrepresented( 過小評価・代表不足)
● social justice(社会正義)
● oppression(抑圧)
● mental health(メンタルヘルス)
● disabilities(障がい)
● affirming care( 個人を尊重する医療)
● person-centered care(ひと中心のケア)
● clean energy(クリーンエネルギー)
● climate crisis/climate science( 気候危機・気候科学)
● pollution(公害)
これらの語句は、私たちがグローバルな価値観と向き合ううえでごく一般的に使われてきたものです。そのような言葉が「使えない」というだけでなく、「存在しないことにされる」可能性があるという現実は、私たちが想像する以上に深刻な問題をはらんでいます。
実際に中村キース・ヘリング美術館では、アメリカ大使館や領事館と連携した取り組みのなかで、こうした語彙を使用して多様性を語ることが難しくなっている場面が出てきています。
それでも当館は、アーティストであり社会活動家でもあったキース・ヘリングが生涯をかけて発信し続けたメッセージ -アートはすべての人のため – を守り抜くことを選びます。時代の風向きに流されることなく、見えなくされそうなコミュニティに光を当て続けることが、私たちの役割であると信じています。
言葉を失うということは、表現の自由だけでなく、存在そのものを失わせてしまう危険すらあります。
あなたは、このような動きをどう受け止めますか?
PROFILE
Hiraku
ニューヨーク育ち。2014 年まで米国人コスチュームデザイナー・スタイリスト、パトリシア・フィールドの元でクリエイティブ・ディレクターを務め、ナイトライフ・パーソナリティーやモデルとしても活動。現在では中村キース・ヘリング美術館でプログラム&マーケティングディレクターとして、自身が人種・性的マイノリティーとして米国で送った人生経験を生かし、LGBTQ の可視化や権利獲得活動に積極的に取り組んでいる。
https://www.nakamura-haring.com/
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