HIRAKU’ s VIEWPOINT コラム vol.28
「IKIGAI」言語化ワークショップ
Hiraku(中村キース・ヘリング美術館ディレクター)
# HIRAKU’ s VIEWPOINT
# HIRAKU’ s VIEWPOINT英語
# Vol.20
海外からみた日本について熟知されているお二人に、日本と海外の文化・習慣のちがい、コミュニケーションのヒント、グローバル人材として活躍するために必要なことなど、さまざまな角度から語っていただきました。
C-PRESSの人気コラム『ことばのおもてなし』と『Hiraku’s Viewpoint 』が夢のコラボ!通訳として長年異文化間の橋渡しを行ってきた西手夕香里さんと、幼少期からニューヨークで過ごし、ファッション業界でご活躍された経歴を持つHirakuさん。海外からみた日本について熟知されているお二人に、日本と海外の文化・習慣のちがい、コミュニケーションのヒント、グローバル人材として活躍するために必要なことなど、さまざまな角度から語っていただきました。
西手 : いつもC-PRESS ではお隣で連載させていただいていますが、お会いするのは今日が初めてです。Hirakuさんのコラムはゼロからイチを生み出すような内容なので、きっと限界まで自分を見つめて、自問自答しながら絞り出すことができる方なのだろうなと思っていました。
Hiraku : 実はコラムを書いているときのマインドは「怒り」がデフォルトなんです。なので何も考えずに書くと、ただ 文句を言っているだけになってしまう(笑)それを、ただの怒っている人で終わらせないためにはどうしたらよいかと考えて、丸める作業があるわけです。そのときに自分を見つめ直しているといえば、そうだと思います。
西手 : 怒っている自分を冷静に見つめることができて、ちゃんと伝わるメッセージとして昇華させる。すごく真面目なんですね。
Hiraku : たしかに真面目だと思います。徹しなくてはならないという気持ちが根本にあります。たとえば美術館で働き始めたころは、僕の派手なところが気に入られていると思っていたので、自分の気分ではなくても期待に応えようと頑張って派手な格好をし続けていた時期がありました。わざとシミックのオフィスに全身豹柄で行ったりとか(笑)
西手 : 日本では、派手な格好はそれだけで不真面目のレッテルを貼られてしまいがちですが、Hirakuさんにとっては派手な格好が真面目の現れだったわけですね。面白い。
Hiraku : たしかに、真面目の捉え方は日本とアメリカではずいぶんちがいますよね。日本人が真面目だと思ってやって いることがアメリカ人にとってはすごく失礼なこともあります。
西手 : それに関して、日本人の専門家の講演を通訳したときの象徴的なエピソードがあります。講演では「このように立派な先生方の前で私のような若輩者がこのような高いところから……」と、謙遜のオンパレードだったんです。会場には欧米人の方が多かったのでそのまま訳してしまうと「だったらなんであなたが話すの」と能力がないのに登壇している演者だと思われてしまうので、私はあえて“ As an expert in this field, I will share my extensive experience with you ”( 私はこの分野のエキスパートなので私の知識を共有します)と訳しました。しかし、あとでその演者の方に「『高いところから』を訳さなかった」と怒られてしまいました(笑)
Hiraku : 日本人は社会的な地位をとても重視しますよね。僕は社会的地位よりもその人自身の個性や能力に対して興味があるので、コミュニケーションがとりづらいなと感じることがあります。
西手 : 欧米では、肩書ではなくどんな技能を持っていて、何ができるのかが重視される。集団の中での位置づけではなく、個としての強みを出していく必要がありますよね。
Hiraku : 全くその通りです。グローバル化は流ちょうに英語を話せることだと勘違いしている人が多いように思いますが、あくまで言語は情報や思いを伝えるためのツール。ツールを使いこなそうとする前に、まずは自分というものを明確に持ち、文化的な感覚のちがいなども踏まえて相手に自分の伝えたいことを効果的に伝えるためにはどうすれば良いかをしっかり考える力が必要だと思います。そうしないとせっかくツールを手にしてもコミュニケーションが成り立ちません。
西手 : 文化を問わず、何かひとつのことにエネルギーを注いだ人の言葉は、必ず人の心を打ちます。私は以前、日本企業の社内通訳として創業者哲学を海外従業員に伝える仕事をしていたのですが、私が創業者の気持ちになって一生懸命通訳すると、アメリカ人が涙するんです。そのとき、二つの文化が根底の部分では交わっていると強く感じました。
Hiraku : ものづくりや文化など、日本人が作り上げた素晴らしいものはたく さんあります。しかし、自分たちの文化を何も考えずただの習慣として漫然と受け入れている人が多く、残念だなと感じます。たとえばお花見は、自然を主役にしてその下で宴をするという、日本特有の素晴らしい文化ですが、雰囲気が台無しになるような飲み方や食べ方をする人がいます。歴史のどこかで、自然を愛でるという本来の意味が失われ、自分中心のイベントになってしまったんでしょう。
西手 : 私も海外の友人に「1~2 週間しか咲かない桜を待ちわびて、これだけ愛でるなんて素敵な文化だね」と興奮気味に言われ、「確かにそうだな」と思ったことがありました。そうやって逆に海外の視点から日本の文化を見直すことがありますね。
Hiraku : まずは日本人として、日本の習慣の持つ意味や歴史についてもっと理解を深めていくことが本来のグローバル化につながるのではないでしょうか。
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Profile
西手 夕香里 Yukari Nishide
通訳・翻訳修士
日米企業の社内通訳として11年間の経験を積んだのちに独立。フリーランスとして規制当局によるGxP 査察を中心に医薬品分野の通訳に関わる。2016 年にシミックグループに入社。現在、多数のプロジェクトで通訳・翻訳者として活躍中。
Hiraku
ニューヨーク育ち。2014 年まで米国人コスチュームデザイナー・スタイリスト、パトリシア・フィールドの元でクリエイティブ・ディレクターを務め、ナイトライフ・パーソナリティーやモデルとしても活動。現在では中村キース・ヘリング美術館でプログラム&マーケティングディレクターとして、自身が人種・性的マイノリティーとして米国で送った人生経験を生かし、LGBTQ の可視化や権利獲得活動に積極的に取り組んでいる。
https://www.nakamura-haring.com/
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