# HIRAKU’s VIEWPOINT

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# Vol.22

SNSでのジェンダー表現をアップデート

Hiraku(中村キース・ヘリング美術館ディレクター)

#カルチャースイッチ   #LGBTQ   #コラム  

皆さんは最近SNS上で自己紹介として「he/him」「she/ her」や「they/them」など代名詞が添えられているのを目にしたことはありますか?

 皆さんは最近SNS上で自己紹介として「he/him」「she/ her」や「they/them」など代名詞が添えられているのを目にしたことはありますか? これは自分にどの代名詞を使ってほしいかを表しています。たとえば生まれながらに男性として生きるシスジェンダーの男性、または女性として生まれたけれど男性としてのアイデンティティを持つトランスジェンダー男性は「he/him」(女性の場合は「she/her」)というように用います。では、「they/them」とはいったい誰のことを指すのでしょう?

 一般的に「they/them」を使ってほしい人たちのジェンダーを「ノンバイナリー(二極ではない)」と言います。「男女」という2つの性別に納まらず、ジェンダーを連続的なものとする考えが基本になっています。もちろん賛否両論ありますが、英語を話す過半数の人たち、特にLGBTQ+のコミュニティとその周辺の人たちは当たり前に使い分け、SNS上では広く知られています。「they/them」は、人や物の複数形を表す代名詞ですが、単数の意味でも使います。また、最近では相手のジェンダーを知らない、または確かではない際にも使われたりします。以前は「someone(誰か)」の代名詞は性別を問わず「he/him」だと教わりましたが、現在では「they/them」が主流です。


 他の言語でも同様の動きがあります。スペイン語には名詞に性別があり、たとえばラテンアメリカ圏に住む、またはルーツがある人のことを男性形(語尾が-o)で「Latino(ラティーノ)」、女性形(語尾が-a)で「Latina(ラティーナ)」と呼びます。男女の複数を指す場合は「Latinos(ラティーノス)」と男性形でした。そこを最近では「-x」を使った「Latinxs」、「-e」を使った「Latines」といった性別のない単語に置き換える動きが浸透しつつあります。

 このようにジェンダー表現は、世界中でSNSの力を借りて変化しています。私たちは日々、パソコンやスマホでアプリを気軽にアップデートしています。言語や思想、常識でも同じことが言えるのではないでしょうか。特にSNS上では、実社会を反映する常識やルールが常に変化しています。SNSが常識や思想をアップデートしていく時代とも言えるでしょう。コミュニケーションの中心にSNSがある社会の参加者として、ぜひ「アップデート」を続けていきたいものです。

PROFILE

Hiraku

中村キース・ヘリング美術館ディレクター

ニューヨーク育ち。2014 年まで米国人コスチュームデザイナー・スタイリスト、パトリシア・フィールドの元でクリエイティブ・ディレクターを務め、ナイトライフ・パーソナリティーやモデルとしても活動。現在では中村キース・ヘリング美術館でプログラム&マーケティングディレクターとして、自身が人種・性的マイノリティーとして米国で送った人生経験を生かし、LGBTQ の可視化や権利獲得活動に積極的に取り組んでいる。

https://www.nakamura-haring.com/

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